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子どもの頃に、「クマのプーさん」に出会った。石井桃子さんの翻訳だった。「桃子さんだって。なんてかわいい名前なんだろう」と思った。 プーのお話は、何度も何度も読み返した。ロバのイーヨー、子豚のコブタ、トラー、フクロ、ウサギ、カンガとルー、唯一の人間クリストファー・ロビン。でも、人間とかそうでないとか、どうでもいい。この翻訳で、情景が目に浮かび、声が聞こえてきて、子どもの頭の中で、一つ一つのエピソードが、リアルなものになった。ユートピアそのものだった。 大学生になり、「クマのプーさん」について、卒業論文を書いた。どうやって、クマのプーさんが生まれたか、作者のミルンの生きた時代はどんな時代だったか、この本の挿絵を描いたE.H.シェパードとミルンの交流…。石井桃子さんの翻訳が、一人の子どもの世界をいっそう広げてくれたのだった。石井桃子さん、安らかに。 |
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